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平成30年度秋季入学式を実施しました

平成30年10月1日、産業技術大学院大学秋季入学式を実施しました。この日、情報アーキテクチャ専攻4名、創造技術専攻8名が入学しました。新入生に向けた学長の式辞を紹介します。

川田誠一学長 式辞

川田誠一産業技術大学院大学学長

本日、産業技術大学大学院に入学した情報アーキテクチャ専攻4名、創造技術専攻8名の皆さん、入学おめでとうございます。本日列席の教職員ともども皆さんの入学を心からお祝い申し上げます。またこれまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆さまに心よりお祝い申し上げます。

 本日皆さんは本学で学ぶために新しい一歩を踏み出しました。専門職大学院としてユニークな教育を実践している本学を選ばれ入学される皆さんに敬意を表したいと思います。
 本学は平成18年開学以来、本日をもって学生募集総数1,210名、入学者総数1,274名、修了生総数879名となりました。産業技術分野の専門職大学院として着実に社会に認知されてきました。

この専門職大学院の制度上の特徴は、『理論と実務を架橋した教育を行うことを基本としつつ、少人数教育、双方向的・多方向的な授業、事例研究、現地調査などの実践的な教育方法をとること、研究指導や論文審査は必須としないこと、実務家教員を一定割合置くこと』などです。本学はこのような基準に基づいて教育システムを開発するなかで諸外国の調査を踏まえて、開学当初からプロジェクトを中心に据えた教育プログラムを実施し、それを継続的に改善発展させてきました。先ごろその成果をAIIT‐PBLメソッドとして取りまとめたところです。
 本学の設計当時私が在職していた東京都立大学大学院機械工学専攻では、若手教員がフルブライト奨学金を得て1年間スタンフォード大学に留学しPBL型教育について調査を実施し、日本におけるPBL導入のための高い知見を得ることができました。これとは別に東京都立科学技術大学においても1998年からインターネットを用いた遠隔PBLをスタンフォード大学と連携して実施するなどの取り組みを実施していました。このように後の首都大学東京に合流する二つの大学においてPBL型教育を対象としたそれぞれ独自の調査研究と実践が始まっていたのです。

 私は、オランダのデルフト工科大学やアイントホーヘン工科大学を調査しました。アイントホーヘン工科大学では、機械工学とデザインを融合した新学科が教育を始めていました。その新学科では全ての教育がPBL型教育で実施されていました。講義形式の授業科目は存在せず、すべて学生によるプロジェクトチームがプロジェクトを遂行することで知識、スキル、コンピテンシーを獲得するというものです。当然のことながら新入生はプロジェクトを遂行するに足る知識に欠けています。それを補うのが、教員による簡単なレクチャーです。あるプロジェクトを遂行するのに必要な知識体系については、教員がどのような体系が存在するのか、それはどんなものであるのか、それを学ぶにはどのような書籍で学べば良いのか、など学生に自学自習に必要なノウハウを伝えるのです。学生は自身の課題を解決するのに必要な知識などを自身で学びます。もちろん、教員は学生の質問には親切に答えますが、学習の主体はあくまでも学生であり、教員はそれをサポートするだけです。2日間の調査では、最終年次の学生が調査の手助けをしてくれました。その学生の言葉を今でも思い出します。「自分はこの後、ある企業に就職することが決まっている。この大学で学んだおかげで、チーム活動において、課題を抽出し、自学自習して課題解決に取り組む自身がつきました。」この言葉は、今本学の修了生の多くから聞くことになりました。

 このような検討を進める中でブルームの教育分類(Taxonomy of Educational Objective: Benjamin Samuel Bloom)に着目しました。これは認知領域、情意領域、精神運動領域のそれぞれに対して学習対象を知識、態度・習慣、技能に分類したものです。学習の成果は体系化、内面化、自動化にそれぞれ対応します。講義を主体とした授業では主として認知領域の教育が実施されています。そして知識の獲得とその理解を学生に求めます。しかし専門職大学院における教育においては実践的な問題解決や問題発見の力を学生に獲得させることが教育の目的の一つとなります。特に社会人学生が現実に抱えている課題などを解決できるような教育が重視されるのです。このことについて、本学では次のように発信しています。

川田誠一産業技術大学院大学学長

 「さて、実社会で直面する技術課題は演習問題ではありません。一つの専門知識やスキルで解決できない課題がほとんどです。従来の大学院教育で実施されてきた体系的な知を獲得しているだけで解決できるほど現実の問題は単純ではありません。むしろ従来の知識だけでは、その本質を理解することすら困難な複雑性を有しています。それぞれが技術横断的な問題解決を必要とするのです。本学では、このような現実の問題を高いレベルで解決できる人材を育成するために豊富な事例を用いた授業や本格的なPBL型教育を導入することで、実践的な業務遂行能力を獲得できるようにしました。PBL型教育の原点は自らの力で原理原則に立ち戻り考えることと、高いコミュニケーション力を発揮してチームで強固な壁を突破することにあります。これらの力を本学では全学生が獲得すべきコンピテンシーとしています。すなわち、コミュニケーション能力、チーム活動、継続的学習と研究の能力の3つのメタコンピテンシーの獲得を皆さんに求めています。」

 本学には多様な学生が入学しています。様々な世代の方々だけではなく職種、職層も様々で、大学を卒業したばかりの方、企業の現場で活躍しているエンジニア、管理職、経営者などが本学の学生として学んできました。本学学生や修了生には社長をされている方も少なくありません。そういった方で組織化した社長会も設置しています。外国人学生も留学生だけではなく、企業で活躍している外国人の方々も毎年入学しています。このような学生達が同じ立場でチーム活動するような学習環境は我が国では本学でしか見られないと言っても過言ではないでしょう。今日皆さんは22歳から74歳までの同窓生、友人を得ました。6割の学生が40歳以下、4割の学生が40歳以上、わくわくする学びの環境が整いました。
 新入生の皆さん、どうぞ本学で学び、キャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップする力を獲得してください。

 本日は、誠におめでとうございます。

平成30年10月1日
産業技術大学院大学
学長 川田誠一

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