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川淵三郎理事長 挨拶

川淵三郎理事長

 ご入学おめでとうございます。この大学院に入学される皆さんは働いている方が多いと思います。そうした意味ではこれからの2年間か3年間、疲れもある中で仕事後に、あるいは土曜日に学ぶことを決心されたわけです。これからも社会が大きく変化していくと思いますが、しっかり新しい知識、新しい技術を自ら学ぶ、そしてそれを後世に生かしていくといった決心をされたことに心から敬意を表します。
 昨今、人工知能というのは大きく進歩しています。囲碁の世界ではコンピューターが人間に勝つにはあと10年かかるだろうと言われた中で、先日、韓国の世界一の棋士が1勝4敗という惨敗をしたことは私自身もすごくショックでした。将棋の世界でも人口知能と対決するわけですが多分勝てないだろうと思います。このように世の中これから一気呵成にそういった人工知能、AIが発達して、人間の思考に取って代わることが多くなるだろうと思います。こうした中でAIが人間の頭脳を越えるのは2045年くらいだろうと言われていますが、越えると言っても人間にしかやれないことはあるわけです。そういった人間しかやれないことは一体何だろうかということを考えながら、そこを自分たちが向上させていく、人口知能とともに自分達が繁栄する社会を築いていく、そういう気持ちを持つことが一番大事なのかなという風に思います。
 1760年頃にイギリスで始まった第一次産業革命により、社会状況は決定的に変わっていきました。織物が手作業から機械作業になったり、蒸気機関が発明されたり、石炭が使われたりということで、世の中の構造というよりは見た目で分かる大きな変化が成し遂げられてきたわけです。それに対して情報革命というのは見た目の変化というよりは中身の変化で、人間の仕事をAIが取って代わる、こうしたことがこれから日進月歩よりも速いスピードで進んでいくものと思います。そういったものに対して、皆さん方がどう考えていくのか、我々がどう対応していくのかというのは、やはり自分の脳、脳の体幹のようなものを鍛えて順応していく、対応していく、それを生かして人間としてのやるべき仕事をしっかり守って、AIとともに社会の発展に貢献する。そうした社会の実現のためにこそ、この大学院があるのだという風に思っています。今既に世の中で起こっている大きな情報改革の進行はますます激しくなっていくと思いますが、皆さん方がこうした考えを常に念頭におきながら、動揺することなく自分として自信をもって対応していく、そのためにこそこういうところで学ぼうという気持ちになっていただいているのだろうな、ということを私自身強く感じています。
 私も理事長になって今年で4年目を迎えますが、1年目に何回か授業を見させてもらいました。その中で、普通の大学とは違う授業に対する皆さんの真摯な態度に非常に感銘を受けました。今日、私にとっては4回目の入学式なのですが、過去のどの入学式にも負けない皆さんのやる気に満ちた視線が素晴らしい、様々な年齢の差を越えて互いに刺激し合い、ここでの学びの中から世の中の発展のために貢献していける人材が集まっているのかなと感じています。2年後、3年後、本当に1つ自分が大きくなったと思えるような、そういう学びをこの大学院でしていただくことを心から願って私のお祝いの言葉とさせていただきます。本日はどうもおめでとうございました。

 平成28年4月2日

公立大学法人首都大学東京 理事長 川淵 三郎

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