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川田誠一学長 式辞

川田誠一学長

 本日、修士の専門職学位を授与される94名の皆さん、誠におめでとうございます。本日ここに、情報システム学修士45名、創造技術修士49名が新たに生まれます。ご列席の来賓の方々、川淵理事長はじめ法人幹部、教職員ともども皆さんの学位授与を心からお祝い申し上げます。またこれまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様に心よりお祝い申し上げます。

 さて、平成18年に開学以来、今年度10月までに合計1,000名の学生募集を実施し、1,054名の学生が入学しました。累計しますと平成18年に開設した情報アーキテクチャ専攻では情報システム学修士399名、平成20年に開設した創造技術専攻では創造技術修士307名、合計706名の修士を本学は送り出すこととなりました。長期履修生として長く学んでいる方や、業務多忙、転勤、出産などで学業を中断せざるを得ない方がいる中での数字です。

 さて、産業技術大学院大学で学位を授与される皆様は、情報システム学修士(専門職)、創造技術修士(専門職)のようにそれぞれの専攻が目的とした高度専門職人材育成の専門職学位課程を修了した証としての学位が授与されます。専門職大学院大学だけが付与できる専門職学位であります。

 専門職大学院はまだ広く社会に知られているとは言えません。これを踏まえ文部科学省のホームページには、一般向けの専門職大学院の説明がございます。『専門職大学院は、科学技術の進展や社会・経済のグローバル化に伴う、社会的・国際的に活躍できる高度専門職業人養成へのニーズの高まりに対応するため、高度専門職業人の養成に目的を特化した課程として、平成15年度に創設された』ものであります。『制度創設時から法曹人材を育成する法科大学院、会計、ビジネス・MOT(技術経営)、公共政策、公衆衛生等の様々な分野で開設が進み、平成20年度には、実践的指導能力を備えた教員を養成する教職大学院が開設されています。』

 産業技術分野の高度専門職人材を育成する専門職大学院としては、東京大学が設置している原子力専攻の専門職大学院や京都、神戸に設置されている私立の情報系専門職大学院があるものの、本学のように高度情報人材育成とデザインと工学を融合した高度ものづくり人材育成を総合的に実施している専門職大学院は日本でも本学だけであり、このユニークな教育の実践について、文部科学省をはじめとして政府機関からも本学に大きな期待が寄せられるようになってきました。

川田誠一学長

 専門職大学院の制度上の特徴は、『理論と実務を架橋した教育を行うことを基本としつつ、少人数教育、双方向的・多方向的な授業、事例研究、現地調査などの実践的な教育方法をとること、研究指導や論文審査は必須としないこと、実務家教員を一定割合置くこと』などであり、これらは設置基準などで定められています。本学はこのような基準に基づいて教育システムを開発する中で諸外国の調査を踏まえて、開学当初からプロジェクトを中心に据えた教育プログラムを実施し、それを継続的に改善発展させてきました。先ごろその成果をAIIT‐PBLメソッドとして取りまとめたところです。

 本日学位を授与された皆様は、このAIIT‐PBLメソッドを実践する授業科目の履修により、高い職務遂行能力を獲得されました。このことは、皆様の今後のキャリアアップ、キャリアチェンジ、スタートアップにおいて大きな力となることと確信しています。

 さて、専門職大学院が、社会からの高い評価を得て、将来に向けて発展を遂げていくためには、『関係する産業界、学協会、職能団体、地方公共団体等との連携を図りながら、制度の趣旨を踏まえ、理論と実務を架橋した実践的な教育の充実に不断の努力をしていくこと』が求められています。本学では、日本を代表する産業界のリーダーの方々を委員とし、日本IBM副会長の橋本氏を委員長とした運営諮問会議を設置しています。また、地域の自治体や信用金庫などの諸機関や産業界と連携し、東京都が設置した専門職大学院に相応しい活動を継続し実施してきました。

 本日修了される皆さんは、このような特色あるユニークな教育プログラムで学ばれました。そして皆様が実践されたプロジェクトの中には、産業界との連携や、自治体との連携、さらには本学と連携しているASEAN諸国の大学との共同プロジェクトなどがあったことでしょう。

川田誠一学長

 ここに一つの事例をご紹介します。

 今週の13日月曜日に、本学とインドネシアのジャカルタにあるダルマプルサダ大学との間で国際セミナーが開催されました。ダルマプルサダ大学は、第二次世界大戦中に南方留学生制度で日本に学んだ方々や、戦後に実施された賠償留学制度で日本に学んだ留学生の方々が1986年に創設した大学です。本学とは交流協定を締結しております。また、この大学を支援するために福田康夫元首相が会長をされている、日本インドネシア協会がダルマプルサダ大学を支援する日本の大学のコンソーシアムを昨年末に立ち上げました。本学は、予てから交流のある元インドネシア大使からの招請で、そのコンソーシアムの参加校となりました。

 その後、ダルマプルサダ大学の学長が本学を表敬訪問された際に現地で共同セミナーを開催することを約束し、今週月曜日にセミナーを開催したわけです。本学からは、学長の私と4名の教員、そして2名の学生が出席し講演いたしました。本学学生の講演では、インドネシアのジャカルタにある世界遺産の旧バタビアの河川が汚染されているのをバイオテクノロジーで浄化し、九州の柳川のような観光地にすることの提案がなされました。その実験としてダルマプルサダ大学に隣接した川の浄化プロジェクトも両大学で共同実施しており、すでに実験の成果により川の浄化が進んでいることも当日確認されました。

 このように、本学の修了生の皆様方のプロジェクトはいずれも高いレベルの成果を出しており、それらのプロジェクトを実施することで獲得した皆様の業務遂行能力と学業成績を総合的に判定して、本日ここに修士の専門職学位が授与されることになったわけでございます。

 さて、皆さんご承知の通り、我々は世界のダイナミックな動きの中で生活を営んでいます。直近では米国大統領選挙で新大統領が選出され世界に変化をもたらそうとしています。また、英国のEUからの離脱決定があり、今後の世界経済の推移については予断を許しません。また、地域紛争が世界的に波及し、海外で仕事をする日本人の生命も危険にさらされるような事態もございます。日本においても被災地の復興はまだまだの状況であり、エネルギーの確保、食料の確保、少子高齢化問題、国の安全保障の問題など様々な課題があります。

 このような時代背景の中で、社会や自身の課題解決のために更なる高みを目指して本学に学び、本日学位を授与される皆様を我々は誇りに思います。

 どうか皆様、本学で学んだ知見を活かし、幸せな輝かしい人生を歩んでください。

 本日は誠におめでとうございます。

 平成29年3月18日
産業技術大学院大学学長 川田誠一

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