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第10回インタビュー
「地問地答」によるモノづくりモデルの開発
―プロセスと成果を地域社会と共有するPBL―

今回のインタビュー

國澤好衛教授

國澤好衛教授
千葉大学にてプロダクト・デザインを学んだ後、1977年に㈱東芝に入社。家電機器のデザイン、新規事業のグランドデザイン、システム開発のコンサルティング、市場・顧客開拓のためのB to Bマーケティングなどに従事。2006年、首都大学東京インダストリアルアートコースの立ち上げに参画。同教授を経て、08年より現職。
写真:2012PBL発表会での國澤PBL記念撮影(國澤教授は右から二人目)

先生が指導するPBLの内容を教えてください。

國澤 フィールドが具体的な、実際に近いプロジェクトを提供しています。2011年度は、板橋区と協力して区内の課題を解決するソリューション開発の3年目となりました。商店街の課題に注目し、大山商店街(ハッピーロード大山)に出向いてリサーチを行いました。そこで抽出したのが、商店街にあふれる自転車の問題です。いくつかの店先に駐輪スペースをつくり、商店街の中は小型カートを用いて移動して買い物するという、買い物客の動きのモデルを設定し、このモデルを実現するためのプロダクトを区内の企業と協力して開発しました。

地域に根ざしたプロジェクトですね。

國澤 モノづくり産業の発展には、「地問地答」が不可欠だと私はかねがね考えています。地域の課題を地域のリソースで解決するという意味です。つくり手側のシーズからではなく、ユーザー側に立った課題解決手法によるモノづくりモデルを開発し、地域での成功を積み上げて全国に波及させていければとの考えです。

プロジェクトはどのように進行しましたか。

國澤 学生自身が企画を立て、企画書を制作して賛同者を募る。地域のモノづくり企業の中から、プロダクトを一緒に開発できるところを探し出し、交渉、契約を行う。これら一連のすべてのプロセスについて、学生が主体的に動いていきます。たとえば、商店街組合と交渉し、警察に道路の一時占有許可を申請するなどのお願いもしなければなりません。試作メーカーと話し合いながら製作を進めることも必要です。学生たちは試行錯誤の中で、プロデュース力や交渉力などを獲得していくわけです。

プロジェクトの成果は実際に役立ちそうですね。

國澤 2010年度PBLで提案した親子スペース用のイスは、修了生が引き続き製品化に向けて動いています。2011年度の成果も、社会人学生だった2名が、実現までフォローすると言っています。社会に還元できる成果を出すことも、当PBLの特長になっています。

國澤PBLでは、どのような人材を育てていくお考えですか。

國澤 デザイン側の素養のある学生には、エンジニアとコミットし、コントロールできるデザイナーになってほしいですね。エンジニア側に立つ人にとっても、プロダクト開発の議論の中ではデザインの素養が必要になってきます。つまり、複数分野のディシプリンを積んだ人材が求められるわけで、PBLなどを通じて、こうしたエンジニアリングとデザインの懸け橋になる人材を育成していきたいと考えています。

2012年度 國澤PBLのアクティビティ

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