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第12回インタビュー
大規模プロジェクトのシミュレーションとeラーニング教材の開発をPBLで実施

今回のインタビュー

瀬戸洋一教授

瀬戸洋一教授
瀬戸PBLにおける指導の様子
(瀬戸教授は写真右端)

PBLの進め方は?

瀬戸 まずはコンピテンシー、つまり社会人基礎力を学生一人ひとりが自己評価します。コンピテンシーを定量化するツールを活用して、自己評価が教員の評価に比べ過大・過小な点をチェック。PBLを通じて身につけるべきコンピテンシーを自覚するわけです。そのうえで、プロジェクトをスタートします。社会人は忙しいので、メンバーが時間を合わせて活動することは簡単ではありません。それに、メンバーが同じマインドや能力を持っているとも限りません。プロジェクトのメンバーにはフラストレーションがたまりますが、それを克服するプロセスもコンピテンシー獲得の契機です。

具体的には、どう対処するのですか。

瀬戸 メンバー全員が、順にプロジェクトマネジャーになります。マネジャーの仕事の一つは、部下が育つのを待つことです。もちろん、メンバーの作業や時間を調整しながら、プロジェクト全体の進行を管理しなければなりません。これは企業など実社会のモデルでもあり、PBLでの疑似体験によってマネジャーとしての資質を身につけていくわけです。学生相互の学びも重要です。事前の自己評価から明らかになったコンピテンシーの課題を、他のメンバーのふるまいを参考にして解決していくこともできます。もちろん教員も手を貸しますが、学生の気づきを促してよりよい方向に向かわせ、より大きな成果を出せるようにコーチ役を務める役割を担います。

2011年度のPBLの成果を教えてください。

瀬戸 PIAの環境整備のため、「計画的なプライバシー対策」について、Wikipedia掲載文書と専門誌に掲載する解説記事を作成しました。PIAの知名度向上とPIAに関する知識の修得が目的です。PIA入門者でも理解しやすく実務に役立つハンドブックを作成するとともに、わが国でのPIA実施体制案を提示しました。PIA実施環境の有効性も検証しました。中小企業家同友会の就職・採用支援サービスシステムが対象です。報告書を作成し、同友会へのレビューも行いました。

たいへん実践的なプロジェクトです。今後も同様のPBLになりますか。

瀬戸 2012年度のPBLは、医療系企業を対象に、データのデジタル化に伴うPIAを中心に実施します。学外との共同研究というフレームワークは変えないつもりです。ITにはセレンディピティ、偶然による発見はありません。自分や誰かの幸せ、満足に必要なもの、大切なものを実現するため、さまざまな技術要素を組み合わせて新しい価値をつくり上げる「アサンブラージュ(Assemblage)」が、IT技術の本質だと私は考えています。情報セキュリティも然りで、ステークホルダーの利害を調整しつつ利便性の高いシステムを追求するPBLを通じて、アサンブラージュのスキルを磨いてほしいと願っています。

瀬戸PBLで修得を目指すコンピテンシー

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