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第67回コラム
漫画アニメの国際交流

情報アーキテクチャ専攻 飛田博章准教授

日本で漫画アニメのイベントと言えばコミックマーケット(コミケ)が有名である。 夏と冬に開催されるコミケには、アマチュア、プロ問わず多くのアーティストが、 (時にはグレーな)作品を制作販売している。 参加者は3日間で50万人を超え、 特に夏は高温と自販機の売れ切れ続出により、 単に見に行くだけにも関わらず命懸けで、 東京にいながら砂漠で遭難した気分を味わえる。

日本の漫画アニメを扱ったイベントは世界各地で開催されている。 とりわけフランス・パリで開催される『ジャパンエキスポ』は今年で15回目を迎える日本の漫画アニメを扱ったイベントで、参加者も20万人を超える盛況ぶりである。フランスでは日本のアニメ(聖闘士星矢、 キャプテン翼、 北斗の拳等)がTV放送されていた下地があり、 現在も多くの日本漫画が読まれている。 コミケ同様、 ジャパンエキスポの会場には、 漫画アニメ関連のたくさんのブースあり、 コスプレーヤーが多数参加する。

フランスのコスプレイヤーは非常に特徴的である。 コスチュームのクォリティーが高いことに加え、一般参加者の殆どがコスチュームを着てイベントに参加する。 従って、会場にはNARUTOやONE PIECEのキャラクターに扮したコスプレーヤーで溢れる。また、日本の場合、コスプレイヤーの多くが会場に到着してから着替えてイベントに参加するが、ジャパンエキスポの場合、殆どの参加者があらかじめコスチュームを着た状態でイベント会場へ向かう。 そのため、 会場に近づくにつれて駅や電車内はコスプレイヤーに占領され、見ているだけでも楽しくなり、不思議な一体感や連帯感が生まれる。

一方で、コミケが主にアマチュアの作品を対象としているのに対し、ジャパンエキスポは企業展示が大部分を占める。特に、日本のゲーム関連の企業が多く見られる。アーティストブースの規模は企業ブースに比べると小さく、デコレーションされた企業ブースでは新作ゲームのプロモーションが華やかに大々的に展開され、一般の参加者も誘導されていく。従って、ジャパンエキスポは、コミケというよりも、東京ゲームショーそのものな気がする。

こうした背景には展示に関する制約がある。 ジャパンエキスポで実際に展示して思ったことは、 展示時間が長すぎることに加え、展示に際し出費が多いことだ。基本的には様々なものが有料でレンタル可能で、ディスプレイ、スクリーン、プロジェクターや、フランス人説明員等手配してもらえるが、それぞれの費用が高い。展示ブースの使用料も高額で、デコレーションされた広いブースで展示できるのは、プロモーション目的の企業展示に限られてしまう。コミケのようにアマチュアアーティストが気軽に参加できるようなイベントにするためには、費用面に改善の余地が必要である。

一方で、 フランスにも独自の漫画はある。 バンドデジネ(bande dessinée)だ。 テンポが重視される日本漫画に比べ、世界観が重視される点に特徴がある。 製本にも特徴があり、絵には彩色が基本で、絵本のように大きくハードカバーで製本される。バンデジネ作家も多く存在し、 特に巨匠•メビウス(Moebius)の世界観は常に新しく、多くのSF映画制作にも携わったバンドデジネ作家である。 日本の著名な漫画家も影響を受けたことでも有名である。

ジャパンエキスポが漫画アニメを通じた文化(サブカルチャー)交流の場として今後さらに発展していくためには、 費用面とコンテンツ面に対して対応が必要だと考える。 また、バンドデジネはもっと注目されるべきで、フランス国内はもちろん、日本においてもイベント等を通し広く知られるべきである。

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