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第104回コラム
人生100年時代を生きる

創造技術専攻 越水 重臣 教授

先行きが不透明な時代において確実に起こるであろうこと。それは長寿命化が進み、これから多くの日本人は100年以上生きる時代に入ろうとしていることである。これは今後起こる、最も影響が大きくて確実な変化だ。しかも、その途方もない変化に対して多くの人は備えができていない。(かくいう自分もできていない!)そこで、今年のPBL(Project Based Learning)のテーマを「人生100年時代に必要な製品・サービスを考える」とした。日々、プロジェクトメンバーと一緒にどのような提案をするかを議論している。ぜひ来年2月のPBL成果発表会を楽しみにしていただきたい。

さて“人生100年時代”が流行語になると、(自分は到底100歳まで生きられる気はしていなかったけれども・・・)人生の後半戦をどう生きるべきかを考えずにはいられなくなった。しかし「そもそも長生きは幸せか?」という疑念が真っ先にわいてくる。医療が発達する中、なかなか死ねなくなり平均寿命だけが延びていく、そんなのはご免こうむりたい。健康が幸せな人生のベースであるならば、健康寿命も伸びていってほしい。そんな中、寿命に関して、ホンマでっかTV!? で有名な武田先生の書籍1)に面白い記事を見つけたので紹介しよう。

“死のスイッチ”が入るとき、すなわち、寿命がくるときには、次の3つのパターンがあるという。

  1. ① 経験数一定の法則で死のスイッチが入る
  2. ② 子供のために親の死のスイッチが入る
  3. ③ 仲間に貢献しないと死のスイッチが入る

①の経験数一定の法則で・・・というのは、例えば、人間が一生のうちに心臓が拍動する数が決まっていて、その一定数に達すると寿命が来るという考え。そういえば、単位時間あたりの心拍数が多い人は早死にするとか、まことしやかに聞いたことはないだろうか。

②の子供のために親の・・・は、本の中ではサケの一生など、生物の例が多く出てくる。生物にとって出産と子育ては生涯で最大の出来事であるからこそ、親は子のために命がけで出産し、子供が育ってから死んでいくと本の中では述べられている。命のバトンをつなぐということだろう。
しかし、人間の場合は、別に子育てが終わったからといってすぐに死ぬわけではない。その後の人生も同じくらい長くなっている。子育てが終わったら「第1の人生」は終わったと考えて、自分は生まれ変わったのだというくらいの気概で「第2の人生」を生きていくというのが大事かもしれない。

最後、③の仲間に貢献しないと・・・は、社会の役に立つことをするのが生きている意味だとして、そうでないと死のスイッチが入るのだということらしい。確かに、「第2の人生」においては、社会に貢献する何かをしていないと自分の存在理由を見失い、仲間からも必要とされなくなり、鬱になったり、老け込んだりしそうな気がする。寿命とは本来、病気によってもたらされるのではなく、社会の中で存在する理由がなくなると“死のスイッチ”が入るものなのだ。そして逆に、貢献的な行動をとると、生きる意味が生じて、喜びを感じ、健康になり、長寿に至るということらしい・・・。何かそこに、人生100年時代を生きるヒントがありそうだ。人の世に役立つ自己の完成に努めようと思う。

1)武田邦彦:老人のウソ、産経新聞出版(2018)

2018年8月8日
嵐が迫りくる夜に
越水重臣

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