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第31回コラム
「研究への取り組みについて」

情報アーキテクチャ専攻助教 小田切和也

研究への取り組みについて

 産技大の情報アーキテクチャ専攻に通われている学生の皆さんの多くは、社会人として仕事を持ちながら学んでいる方が大半ですが、モチベーションの高い方が非常に多く驚いています。私もフルタイムで働きながら、博士の学位を取りましたので、仕事と学業の両立を行う大変さは、身を持って理解しています。ですので、手持ちの授業の場面では、学生の皆さんに出来るだけの配慮を行っていきたいと思っています。

 さて、私の研究分野は、ネットワーク管理の領域で、実務に近い分野の研究を行っており、教員になる前にシステム関係の仕事をしていた経験の中で、疑問を持った点などを元に研究を行っています。具体的にはPolicy Based Network Management (PBNM) と呼ばれる分野の研究を行っています。このPBNMは、ある組織のネットワークポリシーやセキュリティポリシーに適合させることが出来るように、ある程度柔軟にネットワークを管理しようとする管理方式で、大学などのように様々な人々が出入りする場所のネットワークに適した管理方式です。個人毎に利用出来るサービスの種類を限定したり、あるいは、クライアントPCを接続した場所によって、利用できるサービスを変えたりするようなことが出来ます。私は、そのPBNMに関して、目新しい方式の研究を行っています。

 企業や大学の情報システム関係の部門では、情報システムやネットワークシステムの構築なども行う場合もありますが、運用・管理に関する業務もかなりの割合で行っていると思います。しかしながら、この運用や管理に関する業務は、新しいシステムを導入するような派手な業務に比べて、日の当たりにくい種類の業務と言えると思います。私自身も、この種の業務経験がある為、モチベーションを保つのに苦労した覚えがあります。システムの運用や管理に費やす費用は、組織における全ての情報関連の投資額に占める割合がかなりの割合に達するにも関わらず、注目を集めにくい為、担当者がジレンマを抱えやすいです。やっても報われにくい業務については、出来るだけ労力を費やさずに済ませて、他の業務に時間や労力を費やしたいと思うのが人情です。一般的に言って、利用者の目に見えにくい仕事になればなる程、そのようなジレンマを抱えやすくなると思います。特に、ネットワークに関しては、使えて当たり前のもので、水道や電気などのインフラと同じような位置付けとして取り扱われることが多いので、もっとネットワーク管理を効率的に行う方法がないのかと、私は常日頃から思っておりました。そのあたりの経験が、現在の研究を行っている動機になっています。ITに関する研究分野は多岐に渡り、基礎的な研究も非常に重要なものであると認識していますが、ITはそれを利用する人間にとって良いことをもたらす為に使われるべきだと思いますので、このような視点で研究を進めて行きたいと考えています。

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