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山本良一理事長 挨拶

東京都公立大学法人理事長として、法人を代表して一言祝辞を申し上げます。
本日晴れて学位授与式を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。
また、ご来賓の皆様、ご関係者の皆様におかれましては、多大なるご支援・ご協力賜りまして心から御礼申し上げます。

世界は今、激動の時代を迎えています。複雑化する国際情勢や国内外の経済不安、各地で頻発する災害など、世界的視野を持って対応すべき課題が山積しています。
気候変動による影響は深刻です。今年の正月のカリフォルニアの森林火災では死者28名、焼失面積160平方キロメートル、約1万3,000棟の住宅が破壊または損傷したと報じられています。これは昨年の冬に大雨が降って草木が成長した一方、5月からは干ばつが続いた上に、猛烈なハリケーンなみの強風が吹いたことが原因とされています。
皆さんが在学中に地球温暖化が急速に進みました。2024年の世界の平均気温は15.10℃で観測史上の最高温度となり、前年を0.12℃上回りました。世界気象機関によれば2024年の世界の平均気温は、産業化前より1.55℃高く、初めてパリ協定の1.5℃目標を突破しました。このような急速な温暖化が続けば、パリ協定の2℃目標も5年以内に突破されてしまうかも知れません。
我々法人は3年前、持続可能な社会の実現に貢献すべく、国公立大学で初めて気候非常事態宣言を行いました。カーボンニュートラル達成のための行動計画も策定し、既に実行に移しています。さらに、昨年、生物多様性の保全、回復のためにネイチャーポジティブ宣言を行ないました。修了される皆さんは是非これを誇りとし、自らも気候変動と闘ってください。

さて、ここ東京都立産業技術大学院大学は、東京都が設置した専門職大学院です。専門的知識と体系化された技術ノウハウを活用して、新な価値を創造し、産業の活性化に資する意欲と能力を持つ高度専門職人材の育成を目的としています。幅広い年齢、多様なバックグラウンドをお持ちの皆さんは、本学の教育を通じ、真に役立つ実践的なスキルやコンピテンシーを身に付けられたかと思います。先月行われたプロジェクト成果発表会では、19の社会課題に即した興味深いテーマごとに、チームの仲間とともに、在学中に身に付けたすべての力を発揮されたことでしょう。SDGsをはじめとする社会課題解決のためには、イノベーションを起こす必要があります。イノベーションは新技術の開発に限らず、問題を発見するための知性や感性、そして解決に導くためのマネージメントやデザインによっても成すことができます。皆さんの力、活躍により、持続可能な社会を実現し、さらにはグローバルにイノベーションを起こしていくことで、この困難な時代を切り拓いていくことを期待しています。

皆さんは、この先、様々な道に歩み出されます。どのような分野に進まれても、世界のどこに行かれても、先を見通すことができない困難な問題に否応なく向き合っていかなければなりません。しかし、答えは必ずあります。困難な壁にぶつかったときには、大学で学んだ日々を思い出し、大学で得た知識や経験を仲間と共に力に換えることで、広く社会に貢献されることを願っております。
そして、新たな知の獲得や、学びを一層深めたいときには、再び母校を訪れてください。素晴らしい先生方がきっと智慧や気付きを与えてくれ、それが新たな進むべき道を照らしてくれると思います。大学はいつでも、皆さんを温かく歓迎いたします。
改めて、今日の日を心からお祝いし、祝辞といたします。

2025年3月15日
東京都公立大学法人理事長 山本良一

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